トイレ考察

東京市（当時）は１９３３年（昭和８年）にはくみ取りを有料化し、くみ取ったし尿をごみと同様に海へ棄てた。その時、し尿の海洋投棄を目的に建造されたのが「むさしの丸」（３１０トン）であつた。東京都の海洋投棄は戦後の昭和２５年に再開されると、つい最近まで続けられていたのだ。同じように隣の川崎市でも昭和１４年にし尿運搬専用船として「たちばな丸」を竣工させ、房総半島沖合で海洋投棄を開始。戦後は東京都に若干遅れて、昭和２８年から海洋投棄を再開し、清川丸（１１５トン）という木造専用船も建造している。し尿は東京湾の外に出た房総半島沖に海洋投棄されていたが、船を走らせながら排出すると無数の鳥が、し尿にふくまれる餌になる虫を求めて集まってきたらしい。すべてを排出したあとにはマグロやカツオの集団も船に近寄ってきて、おもしろいように釣れたようだ。仕事を終えた帰りの海洋投棄船では、それを肴に一杯ということで、さぞかし充足感に満ちた時間であったであろう。海洋投棄と、鳥や魚の乱舞という取り合わせは、相模湾、伊勢湾、大阪湾、玄界灘など大都市を控えた海では、日常的にくり広げられてい

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